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「ここに一人いちにんがある。この一人が単に自己の思うようにならぬと云う源因のもとに、多勢たぜいが朝に晩に、この一人を突つき廻わして、幾年の後のちこの一人の人格を堕落せしめて、下劣なる趣味に誘い去りたる時、彼らは殺人より重い罪を犯したのである。人を殺せば殺される。殺されたものは社会から消えて行く。後患こうかんは遺のこさない。趣味の堕落したものは依然として現存する。現存する以上は堕落した趣味を伝染せねばやまぬ。彼はペストである。ペストを製造したものはもちろん罪人である。
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